労働判例ジャーナル27号(2014年・6月)
■注目判例
過重労働による安全配慮義務違反と過失相殺・素因減額
東芝(うつ病)事件
最高裁 平成26年3月24日判決
■ポイント
本件は、うつ病に罹患した従業員が休職期間満了後に会社により解雇されたが、本件うつ病は過重な業務に起因するとして、解雇が労基法19条に反し、無効であるとされ、会社に対し、安全配慮義務違反等による債務不履行または不法行為に基づく損害賠償などが認められた高裁判決(東京高判平23・2・23)について、従業員側が損害賠償額の算定などを不服として上告したものである(解雇無効は高裁判決で確定している)。
本判決は、業務の軽減をするなどの措置を執ることなく、従業員がうつ病を発症し、それが増悪したことについて、従業員が情報を申告しなかったことを理由に過失相殺することはできないとし、また、本件従業員が通常想定される範囲を外れるぜい弱性などの特性等があったとはいえず、素因減額が認められないとして、民法418条又は722条2項の規定による過失相殺をすることはできないとした。
このように、本最高裁判決は、会社が従業員のメンタルヘルスについて高度の安全配慮義務を負っていること明らかにしたものといえる。会社にとっては、従業員のメンタルヘルスについて日常的にどのような健康管理体制をとるべきかを再考する必要に迫られるものと考えられる。
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目次
◆ 【注目判例】 過重労働による安全配慮義務違反と過失相殺・素因減額
東芝(うつ病)事件
最高裁第二小法廷(平成26年3月24日)判決
◆ 職務怠慢等を理由とする解雇無効請求
富士ゼロックス事件
東京地裁(平成26年3月14日)判決
◆ 懲戒解雇を回避するための諭旨解雇
西日本旅客鉄道事件
大阪地裁(平成26年2月20日)判決
◆ 障害を理由とする昇格差別の有無
ジヤトコ事件
京都地裁(平成26年3月31日)判決
◆ 事後打刻に基づく割増賃金請求の可否
際コーポレーション事件
東京地裁(平成26年3月27日)判決
◆ 理学療法士の死亡に対する安全配慮義務違反
医療法人社団明芳会事件
東京地裁(平成26年3月26日)判決
◆ 派遣労働者との黙示の労働契約の成立の可否
日産自動車ほか事件
横浜地裁(平成26年3月25日)判決
◆ 出張中の宴席での死亡についての業務起因性
国・渋谷労基署長(飲酒事故)事件
東京地裁(平成26年3月19日)判決
◆ 業務と脳出血発症との間の相当因果関係
学校法人福岡大学事件
福岡高裁(平成26年3月13日)判決
◆ 教員の精神障害に基づく自殺に対する損害賠償請求
鹿児島県・曽於市事件
鹿児島地裁(平成26年3月12日)判決
◆ セクハラ行為に基づく訓告処分に対する損害賠償請求
国(内閣府職員の損害賠償請求)事件
東京地裁(平成26年3月11日)判決
◆ 石綿ばく露による死亡に対する損害賠償
クボタ事件
大阪高裁(平成26年3月6日)判決
◆ 引き抜き行為等に対する損害賠償請求
UTコンストラクション・ネットワーク事件
東京地裁(平成26年3月5日)判決
◆ 市職員に対する分限処分等取消請求
西条市(分限処分等取消請求)事件
松山地裁(平成26年2月27日)判決
◆ 患者からの暴行により発症した精神障害と業務との相当因果関係
北大阪労基署長(療養補償給付等不支給処分取消請求)事件
大阪地裁(平成26年2月26日)判決
◆ 無許可専従に対する懲戒処分取消請求
京都社会保険事務局長(懲戒処分取消請求)事件
大阪地裁(平成26年2月24日)判決
◆ 公害を理由とする損害賠償請求
カネミ倉庫事件
福岡高裁(平成26年2月24日)判決
◆ 障害補償給付請求と時効の完成
堺労基署長事件
大阪地裁(平成26年2月12日)判決
◆ 元従業員の貸金返還請求
東京エムケイ事件
東京地裁(平成26年1月20日)判決
◆ 子による労災不支給処分取消請求
王子労基署長(労災不支給決定処分取消請求)事件
東京地裁(平成26年1月16日)判決
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