労働判例ジャーナル157号(2025年・4月)

■注目判例

大手法律事務所の弁護士の労働者性

西村あさひ法律事務所事件

■ポイント

 本件は,600名を超える弁護士が所属する大手法律事務所の弁護士が事務所との有期契約の更新拒否を通知されたところ,その有期契約が労働契約にあたり,無期転換した(労契法18条1項参照)と主張して労働契約上の権利を有する地位にあることの確認などを求めた事案である。従って,本件の争点は,その弁護士の労契法上の労働者性の有無である。
 法律事務所所属の弁護士の労働者性という事案自体がそもそも稀であるが,本判決は,労働者性判断において,これまでの労働者性をめぐる裁判例とはいささか異なる判断手法をとっていることが注目される。
 具体的な判断枠組みを示すことなく,その契約内容について,当該弁護士が委任契約であることを認識していたことを当該弁護士の労働者性を否定するための重要な要素としているという特徴がある。
 ある程度の実務経験を積んだ弁護士の労働者性という事案とはいえ,このような判断が妥当かは議論の余地があろう。
 また,諾否の自由,指揮監督,時間的・場所的拘束性及び報酬の労務対償性の判断についても,弁護士のような高度の専門職についての労働者性判断として妥当であるかも今後の検討課題である。

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目次

◆ 大手法律事務所の弁護士の労働者性

西村あさひ法律事務所事件

東京地裁(令和7年2月13日)判決

◆ 懲戒(出勤停止)処分無効確認等請求が認められ,損害賠償等請求が一部認められた例

ジェットスター・ジャパン事件

東京地裁(令和6年12月2日)判決

◆ 懲戒解雇無効地位確認請求が認められ,未払払割増賃金等支払請求が一部認められた例

白晃石油ほか1社事件

大阪地裁(令和6年11月22日)判決

◆ 雇止め無効地位確認請求が斥けられ,未払賃金等支払請求が一部認められた例

GHS事件

大阪地裁(令和6年11月21日)判決

◆ 原判決を変更し,元自衛官の慰謝料等請求が一部認められた(認容額減額)例

国・法務大臣事件

福岡高裁(令和6年11月12日)判決

◆ 社内システムへのアクセス等制限に基づく慰謝料等請求が斥けられた例

HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件

東京地裁(令和6年9月19日)判決

◆ 試用期間中の解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

ダイトク事件

東京地裁(令和6年9月18日)判決

◆ 雇止め無効地位確認等請求が斥けられた例

ソラスト事件

東京地裁(令和6年9月18日)判決

◆ 始業時間前のトレーニング指導につき未払割増賃金等支払請求が一部認められた例

ヴィドウ事件

東京地裁(令和6年9月17日)判決

◆ 労働基準法上の労働者であるとして,未払賃金等支払請求が認められた例

辰海工芸事件

東京地裁(令和6年8月30日)判決

◆ 中小事業主等の特別加入者の休業補償給付不支給処分取消請求が斥けられた例

国・三田労基署長事件

東京地裁(令和6年8月29日)判決

◆ 通勤手当不支給等に基づく損害賠償等請求が斥けられた例

医療法人鳳生会事件

東京地裁(令和6年8月23日)判決

◆ 懲戒解雇・普通解雇は無効であるとして,地位確認請求が認められた例

リンクスタッフ事件

東京地裁(令和6年8月16日)判決

◆ 地位確認請求が斥けられ,未払賃金等支払請求が一部認められた例

エンクー・テクノロジー事件

東京地裁(令和6年8月9日)判決

◆ 労働者性が否定され,遺族補償給付不支給処分取消請求が斥けられた例

国・中央労基署長事件

東京地裁(令和6年8月8日)判決

◆ 元自衛官の懲戒免職処分及び退職手当全部制限処分取消請求が斥けられた例

国・陸上自衛隊関東補給処長事件

東京地裁(令和6年8月7日)判決

◆ 3社との間に労働契約が認められ,未払賃金等支払請求が認められた例

木澤商店ほか2社事件

東京地裁(令和6年8月7日)判決

◆ 組合の団交拒否に基づく不当労働行為救済命令申立て棄却命令取消請求が斥けられた例

国・中労委事件

東京地裁(令和6年8月7日)判決

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