労働判例ジャーナル151号(2024年・10月)

■注目判例

諭旨解雇の有効性

ヤマト事件

■ポイント

 本件は,建築付帯設備工事などを業とする会社(本件会社)に1年間の期限を定めて定年後再雇用され,定年退職前と同様の本件会社の常務執行役員兼A支店業務執行責任者であった従業員(本件従業員)が,令和元年6月12日付け諭旨解雇処分は客観的合理的理由及び相当性を欠くものであるから無効であり,また,期間満了後も雇用契約関係は継続しているなどと主張して,本件会社に対し,①雇用契約上の地位確認,②退職一時金残額(213万2000円)など,③未払いの賃金および賞与並びに④慰謝料などを求めた事案である。
 本判決は,本件従業員が外注業者の費用負担で国内旅行に2回及び海外旅行に参加したことが「業務に関し,不正不当に金品,その他の授受をした場合」に該当し,「故意に会社の利益を損なうような行為」および「謀議またはほう助する行為」という懲戒事由に該当し,また,従業員が業務に関して金品等を授受することにより従業員と業者との間に癒着が生じ,本件海外旅行について事前に所定の届出を怠ったことについては「就業規則を守らず,規律を乱す行為」に該当するとされた。しかしながら,本判決は,本件従業員が現に外注先と癒着し,自己又は外注先の利益を図って,会社に損害を及ぼしたとまでは認められないことからすると,その結果が重いとまでは評価できず,諭旨解雇の客観的合理的理由があると認められるか疑問がある。

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目次

◆ 諭旨解雇の有効性

ヤマト事件 東京地裁(令和6年3月13日)判決

◆ 精神障害発症後の自死に基づく遺族補償給付等不支給処分取消請求が認められた例

国・熊本労基署長事件 福岡地裁(令和6年7月5日)判決

◆ 本訴の客室乗務職としての地位不存在確認請求が認められ,反訴が斥けられた例

国・岸和田労基署長事件 大阪地裁(令和6年6月26日)判決

◆ 不正受注による金品窃取等を理由とする懲戒解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

カワソーテクセル事件 大阪地裁(令和6年6月21日)判決

◆ 交通事故後に発症した疾病に基づく通勤災害非該当認定処分取消請求が認められた例

地方公務員災害補償基金大阪府支部長事件 大阪地裁(令和6年6月20日)判決

◆ 有期雇用社員らの手当不支給に基づく損害賠償等請求が斥けられた例

日本郵便事件 大阪地裁(令和6年6月20日)判決

◆ 懲戒解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

前田重機事件 大阪地裁(令和6年6月7日)判決

◆ 変形労働時間制無効に基づく未払割増賃金等支払請求を一部認容した原判決が維持された例

サカイ引越センター事件 東京高裁(令和6年5月15日)判決

◆ 定年後再雇用後の退職合意無効地位確認請求が認められた例

日本ラベル事件 東京地裁(令和6年2月29日)判決

◆ 労働契約締結に基づく未払賃金等支払請求が一部認められた例

小野寺事件 東京地裁(令和6年2月28日)判決

◆ 未払賃金等支払請求及び上司らの発言に基づく損害賠償等請求が斥けられた例

日本クレア事件 東京地裁(令和6年2月28日)判決

◆ 未払賃金等支払請求が一部認容(本訴)され売上金支払請求が一部認容(反訴)された例

ボルター事件 東京地裁(令和6年1月24日)判決

◆ 同僚からの暴行による負傷に基づく休業補償給付不支給処分取消請求が認められた例

国・向島労基署長事件 東京地裁(令和6年1月24日)判決

◆ 差額賃金,未払賞与等支払請求及びパワハラに基づく損害賠償等請求が斥けられた例

ONODA事件 東京地裁(令和6年1月23日)判決

◆ 領事シニアボランティアの労働基準法75条に基づく療養補償請求が一部認められた例

国・中央労基署長事件 東京地裁(令和6年1月23日)判決

◆ 時間外割増賃金及び有給休暇手当未払に基づく未払賃金等支払請求が一部認められた例

アドフューチャー事件 東京地裁(令和6年1月23日)判決

◆ 取締役の言動等に基づく損害賠償等請求が一部認められた例

イーライフ事件 東京地裁(令和6年1月19日)判決

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