労働判例ジャーナル147号(2024年・6月)

■注目判例

事業場外労働のみなし制

協同組合グローブ事件

■ポイント

 本件は,外国人の技能実習に係る監理団体である協同組合グローブ(以下,「本件会社」という。)に指導員として雇用されていた従業員(以下,「本件従業員」という。)が,本件会社に対し,時間外労働,休日労働及び深夜労働に対する賃金の支払を求めるなどするものである。争点となったのは,本件従業員の業務に関わる労働時間が労基法38条の2第1項に規定する事業場外労働のみなし制に該当するかであった。
 原審(福岡高判令4・11・10 LEX/DB:25599166)は,本件会社が本件従業員の作成する業務日報を通じ,業務の遂行の状況等につき報告を受けており,その記載内容については,ある程度の正確性が担保されていたことから,本件業務については,本件規定にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとした。
 しかし,本判決は,原審が業務日報の正確性の担保に関する具体的な事情を十分に検討することなく,業務日報による報告のみを重視して,本件業務につき本件規定にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとしたものとしたことが本件規定の解釈適用を誤った違法があるというべきであるとして,原審判決を破棄し,差し戻したものである。

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目次

◆ 事業場外労働のみなし制

協同組合グローブ事件

最高裁第三小法廷(令和6年4月16日)判決

◆ 法律事務所に対する懲戒処分の審査請求を棄却した裁決取消請求が斥けられた例

日本弁護士連合会事件

東京高裁(令和6年3月13日)判決

◆ 大学非常勤講師の無期転換権発生に基づく地位確認等請求が斥けられた例

慶應義塾事件

横浜地裁(令和6年3月12日)判決

◆ 法律事務所の民事訴訟法92条1項2号に基づく閲覧制限の申立てが斥けられた例

西村あさひ法律事務所・外国法共同事業事件

東京地裁(令和6年3月1日)決定

◆ 差額給与等支払請求を棄却し,損害賠償等請求を一部認容した原判決が相当とされた例

沖縄産業振興センター事件

福岡高裁沖縄支部(令和6年2月29日)判決

◆ 適格性欠如を理由とする本採用拒否無効地位確認請求が認められた例

青葉メディカル事件

大阪地裁(令和6年2月22日)判決

◆ 配属が嫌がらせであったとは認められないとして,慰謝料等請求が斥けられた例

パナソニックホールディングス事件

大阪地裁(令和6年2月16日)判決

◆ 賃金の男女差別的運用に基づく差額賃金・賞与等支払請求が斥けられた例

原田産業事件

大阪地裁(令和6年1月31日)判決

◆ 整理解雇につき,解雇無効地位確認等請求を棄却した原判決の控訴が斥けられた例

クレディ・スイス証券事件

東京高裁(令和6年1月25日)判決

◆ 試用期間中の解雇無効地位確認請求が認められた例

戎屋化学工業事件

大阪地裁(令和6年1月19日)判決

◆ 夜勤勤務の休憩時間に関する未払割増賃金等支払請求が一部認められた例

医療法人みどり会事件

大阪地裁(令和5年12月25日)判決

◆ 制服の更衣は労働時間に当たるとして,未払割増賃金等支払請求が一部認められた例

日本郵便事件

神戸地裁(令和5年12月22日)判決

◆ 契約期間中の解雇は無効だが雇止めは有効として,地位確認請求が斥けられた例

国立大学法人佐賀大学事件

福岡地裁(令和5年12月12日)判決

◆ 成績不良等を理由とする解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

サザビーズジャパン事件

東京地裁(令和5年10月25日)判決

◆ 原判決が取消され,未払割増賃金が一部認められ,付加金等支払請求が斥けられた例

未払割増賃金等支払請求事件

名古屋高裁(令和5年9月28日)判決

◆ 懲戒解雇も普通解雇も無効であるとして,解雇無効地位確認請求が認められた例

福住不動産事件

東京地裁(令和5年9月21日)判決

◆ 休職期間満了時の退職無効地位確認等請求が斥けられた例

ドール事件

東京地裁(令和5年7月28日)判決

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