労働判例ジャーナル136号(2023年・7月)
■注目判例
育児休業等取得後の人事措置と不利益取扱い
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド事件
■ポイント
本件は,チームリーダーとして37人の部下を統率していた女性従業員(本件従業員)が育児休業等の取得後復職したところ,職務等級(職務等級:バンド35,部長営業管理職)は維持されたものの,一人の部下も付けずに優先業務として自ら電話営業をさせたことなどが均等法9条3項または育介法10条の禁止する不利益取扱いであるなどとして会社を訴えた事案である。
妊娠・出産後の人事上の措置をめぐっては,広島中央保健生協事件最判(平26・10・23本誌33号2頁LEX/DB25446716)が,降格を原則として,均等法9条3項の禁止する不利取扱いと判断しているところである。この最判との関係で本件を見ると,職務等級が維持されているので,本件の人事上の措置を「降格」と評価することはできない。このことから,原審(東京地判令元・11・13本誌97号30頁LEX/DB25544897)は,上記の最判の判断枠組みを採用せずに,会社のとった人事上の措置を業務上の必要性があり,出産・育児を理由とする不利益取扱いに当たらないとして,本件従業員の請求を棄却していた。
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目次
◆ 育児休業等取得後の人事措置と不利益取扱い
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド事件
東京高裁(令和5年4月27日)判決
◆ 女性事務員のセクハラに基づく議員に対する慰謝料等請求
慰謝料等請求事件
宮崎地裁(令和5年3月22日)判決
◆ 有期労働契約を理由とする労働条件の相違の不合理性
日東電工事件
津地裁(令和5年3月16日)判決
◆ 法令・会社の規程違反等を理由とする懲戒解雇の有効性
日本郵便事件
札幌地裁(令和5年3月14日)判決
◆ 亡自衛官のうつ病自殺に対する損害賠償等請求
国・陸上自衛隊事件
大津地裁(令和5年2月21日)判決
◆ 自殺した亡警部補の妻子の損害賠償等請求
静岡県(亡警部補妻子の損害賠償等請求)事件
広島高裁(令和5年2月17日)判決
◆ 亡職員の自死に基づく院長に対する損害賠償等請求
損害賠償等請求事件
鹿児島地裁(令和5年2月15日)判決
◆ 整理解雇地位確認等請求
日本維新の会京都府総支部事件
京都地裁(令和5年2月14日)判決
◆ 未払割増賃金等支払とパワハラに基づく損害賠償等請求
住友不動産事件
名古屋地裁(令和5年2月10日)判決
◆元自衛官の国に対する損害賠償等請求
国・法務大臣事件
熊本地裁(令和5年2月7日)判決
◆ 生命保険の不正募集行為を理由とする懲戒解雇の有効性
日本郵便事件
金沢地裁(令和5年1月26日)判決
◆ 妊娠・育児等に関連する事由を理由とする解雇の有効性
学校法人横浜山手中華学園事件
横浜地裁(令和5年1月17日)判決
◆ 競業避止義務違反に基づく損害賠償等請求
Yデザイン事件
東京地裁(令和4年11月25日)判決
◆ 成績不良等を理由とする解雇の有効性
一般財団法人あんしん財団事件
東京地裁(令和4年11月22日)判決
◆ 雇止め無効地位確認等請求
ジョイナス事件
東京地裁(令和4年11月18日)判決
◆ 管理職としての職務懈怠を理由とする降職処分無効等請求
学校法人専修大学事件
東京地裁(令和4年11月17日)判決
◆ 非違行為を理由とする解雇の有効性
長谷川製作所事件
東京地裁(令和4年11月4日)判決
◆ ハラスメントに基づく損害賠償等請求
データサービス事件
東京地裁(令和4年11月2日)判決
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